生物学者のアメリカ暮らし。

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研究室のPI(Principal Investigator):MDとPhDについて

STAP細胞の論文騒動でちらっと見かけたのが、Vacanti(バカンティと書くのもヴァカンティと書くのも変換がめんどいのですみません)教授がMDしか持ってなくてPhDは持ってない、という話。

突っ込みどころは実はそこではありません。

日本の事はよく知らないのですが、アメリカではMD(医学博士)だけでも研究室のボスになれます。しかし、そこに至るまでが重要。
メディカルスクールを卒業してレジデンシー(科によって異なり、3~7年)が終わると、臨床だけしたい人はすぐ患者を診る事ができるのですが、さらに特別な科に行きたいとかになると(例えば、小児科→小児科の循環器科専門)、フェローシップ(2-5年;これを複数やる人もいます)をすることが必要です。
メディカルスクールの中でも2年間プラスで修士がもらえるとかいうプログラムもありますが、普通MDだけだと、そのフェローシップの時に初めて研究ができるのです。その研究も、フェローシップのリサーチメンターのラボによって質が全く違ってきます。要するに、MDフェローは研究する側からみると大学院入りたての院生のようなものなので(いや、やたらプライドとエゴがあるので院生以下)ピペットの使い方を知らない人とか普通にいるわけです。
とはいえ、そのフェローシップ中にすごいスピードで学んでしっかり研究しておけば、PhDやMD/PhDのPI達と対等なラボを確立することができます。

さて。STAP細胞に戻りますが、Vacanti教授はどこで研究を学んだんだろう?と思って掘り出してみたのがこの

2012年のインタビュー。

1978年にレジデンシーを終えたVacanti氏は、5年もプライベートプラクティス(個人病院みたいなもの、大学病院ではない)にいましたが、患者を診るだけではつまらなくなって、もう少し教育に関わってみたい、と思いメディカルスクールに戻って教える事を決意、メディカルスクールで教えているうちに研究にも興味が出てきた、ということです。
研究の恩師は?と聞かれると、Henry Mankin(MD)がちょっとだけ、主に兄であるJoseph Vacanti(小児外科のチーフ、今は幹細胞研究機関のセンター長でもあるみたいです)とBob Langer (MITの化学工学の教授)だそうです。

2003年に出たVacanti兄弟について書かれたNYTの記事によると、Bob LangerはJosephのメンターで、MartinはCharlesとJosephのラボで働く病理学者だということ。要するに家族ぐるみで実験してますね。なのでフォーマルなトレーニングはしなかったということだと思います。組織工学では大変著名な兄弟らしいので、組織工学でとどまっていたらよかったのですが、分野外の細胞とか分子生物学はちゃんとしたトレーニングを受けていないので、突っ込まれるとボロがでてしまうことになっちゃったのかな〜?と思ってます。

また、このインタビューで興味深いのがこのコメント
"One of these scientists, Piero Anversa, is probably one of the most well respected stem cell scientists focusing on cardiac stem cells."
Piero Anversa(ちなみにMD)の幹細胞に関する論文は、実験の再現性がないとして他の学者から批判されています↓

http://www.genomenewsnetwork.org/articles/2004/03/22/heart.php

http://blogs.nature.com/boston/2011/05/12/pop-lung-stem-cells-into

面白い事に、批判をしたAmy Wagers(ちなみにPhD)という当時Irving Weissmanのポスドクだった研究者も現在ハーバードでラボを持っているそうです。このPI、自分のポスドクが不正行為をしたと疑い、即ネイチャーに発表した論文とBloodの論文を取り下げました。このポスドクがしたことは調査機関の調べで不正行為、剽窃をしたことがあとで確かめられました。
PIたるもの、これくらいのインテグリティーを持ってほしいです。
個人的に同じハーバードに属するDr. Wagersが今回の件についてどう思っているのか非常に気になります。。。

結論がMDvsPhDみたいになっちゃいましたがそういう意図ではなくて、ちゃんと基礎研究ができるMDもたくさんいるんですよ〜。(前記のIrving Weissman教授もMDですが、メディカルスクール中に癌の研究をしていて、2年間のポスドクもしたとここに書いてあります)。
でも、たいてい内科じゃないと、いい研究向けフェローシップはないみたいですけどね。(こういうこと言うと外科に怒られそうだけど本当です。。。工学だと話は違ってきますが!)
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by hamakkoinmidwest | 2014-03-21 09:23 | サイエンス/キャリア | Comments(0)

STAP細胞騒動について

忙しくて全くアップする暇がありませんでした。。汗
そんなに書かないならブログ閉めればいいんでしょうがたまーに書きたい事があったりするのでね。。。

はい。まだ生きています。相変わらずポスドクしてます。しかしポスドク期間が5年までなので以前のポスドクラボで3年も無駄にしたせいで正規にポスドクでいられなくなってしまい、タイトル変更らしいです(といっても実質まだポスドクです)。

さて、STAP細胞のNature論文が出た時もマスコミの報道の仕方にムカついて何か書こうかと思ったのですが、ありゃ、ボロが出始めた、と思ったらもう雪だるま式にすごいことになってますね。

まず、私が許せないのがD論のコピペ問題。
コピペが悪いと知らなかったとかでは済まされません。

コピペ=重罪!


そんなこと基本中の基本でしょ?ていうか日本の大学院ってそんなにダメだったっけ??
そういうアホなことする博士号持ちが希なケースであることを願います。

幹細胞は専門じゃないので実験の詳細に関してはコメント出来かねるのですが、写真の差し替えみたいな怪しーことが見つかったらもうその論文終わりでしょう。。
どうやら、O氏が大学院時代にハーバード留学した時のラボのVacanti教授、組織工学ではすごく有名なVacanti兄弟(なんか、4兄弟全員医者みたい。。)の一人だそうで、でも以前幹細胞に関する論文出したら画期的すぎて(?)その分野の専門家からシカトされたので、今回はちゃんとした専門家を研究チームに取り入れて論文を出したかったらしいんですね。
ボストングローブ紙の記事(英語です)

でも、有名な学者で同意してくれる人がなかなか見つからず、学会でO氏とそのアドバイザーのY教授と話した時、Y教授が同意したので、「良い実験技術を持っていながら、考え方が柔軟な人=学生=実際に実験する人」にO氏を抜擢したそうです。

それって、、、。

まぁでもね、これで実験成功した、バンザーイ、めでたしめでたし ならいいんですけど、やっぱり追実験成功した人、世界にまだいないんですよね。こればっかりは、本当だとしても、追実験成功にもっともっと時間がかかるかもしれないので断言はできませんが。

Vacanti教授は未だに「マイナーな間違いがあっただけで、論文そのものの本質を揺るがすものではない」みたいなことを言ってるそうですが、ハーバード/BWHがシーンとしているのでもうちょっと調査とかしようよ、と個人的に思います。。
普通大学院って(特に有名大学)、教授のミスコンダクトが本当にあったりすると、大学の名前が汚れるのでこっそり解雇したりするらしいんですが、ここまですごい騒ぎになってしまったからどうなんでしょうねぇ〜。

しっかし残念な話です。
画像いじったり、コピペしたりするの、研究者として疑われて当たり前なんだから何でやったんだろう。。と全く理解できません。
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by hamakkoinmidwest | 2014-03-17 05:16 | サイエンス/キャリア | Comments(0)

私:Ph.D.をとるためアメリカに来て今はアカデミアとスタートアップの境に存在。夫:元コミットメントフォービックなアメリカ人医師兼研究者。アシスタントプロフェッサー。
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生命科学系PhDをとるため日本の大学卒業後アメリカに来て、当時MD/PhDコース中のPhDの方をやっていた彼と出会いました。彼のレジデンシーの間は国内で遠距離をしていましたが、フェローシップでこの都市に戻ってきたので、何年か一緒に住んでから結婚しました。体外受精の末恵まれた娘と3人暮らし。

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